大家さんから家賃を高くするという連絡が来た 応じなきゃいけないの?~賃料増額請求について~
賃貸賃貸物件弁護士中瀬奈都子
不動産価格の相場が年々上昇している状況の中、大家さんから家賃増額の連絡が来て困っている方も多いのではないでしょうか?
どういった時に賃料増額が認められるのか、その手続きなどについて、解説していきます!
◆法律上の根拠
賃料の増減額については、借地借家法32条1項に定めがあります。
第32条 建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。
つまり、以下のような事情があって、これまでの家賃の金額では不相当となったときに、将来に向かって、家賃の増減額を請求することができる、とされているのです。
▶土地・建物に対する税金その他の負担の増減
▶土地や建物の価値の上昇・低下その他の経済事情
▶近くの同種の建物の家賃と比較
▶その他の事情
なお、一定の期間、家賃を増額しないという特約がついている場合には、原則、その期間中の増額は認められません(事情変更が著しく、特約を維持することが信義則に反すると認められる場合にのみ、増額請求が認められます。)。
◆賃借人としてどう対応すればいいか
賃借人の立場からすれば増額の通知が来ると焦りますし、拒否は出来ないと思いがちです。
でも、そんなことありません。大家さんが上げると決めた金額が適正かどうか分からないですし、一定期間賃料増額をしないという特約があるかもしれません。
新しい家賃を定めた契約書に署名押印してしまったり、新しい家賃の額で支払ってしまうと、後から争うことが難しくなりますので、冷静になりましょう。
従前の契約書を確認して、一定期間賃料増額をしないという特約がないか確認しましょう。そして、上で述べた借地借家法32条1項の定める要件を満たすような事情があるのか、確認する必要があります。どうして家賃を増額するのか、金額を算出した根拠や資料などを大家さんに明らかにしてもらいましょう。
注意すべき点は、大家さんとやりとりをしている間も、必ず従前の家賃を支払い続ける必要があるということです。支払っていないと、家賃対応として、契約を解除され、明渡しを請求されるということになってしまいます。
そうは言っても、大家さんが増額後の賃料しか受け取らない場合もありえます。そういった場合には、法務局に行って、供託という手続きをしましょう。供託をすれば、家賃支払い義務を履行したということになります。
◆話合いが決裂した後の手続きの流れ
話合いでは解決しない場合、家賃を増額したい大家さん側は簡易裁判所に調停を申し立てることになります。「賃料増額調停」というものです。
この調停は、裁判官を含む3名で構成された調停委員会が、間に入って、話合いで解決することを目指す手続きです。
ここでは、上で述べた借地借家法32条1項の定める要件を満たすかどうか、みたすとして、どれくらいの増額が相当かといったことが話し合われます。
ここでも解決しなければ、大家さんが訴訟を提起することになります。訴訟では、裁判官が判断することになります。
◆増額の連絡がきたら、すぐに弁護士にご相談を
不動産に関する知識を豊富に持っている大家さんと対峙して、話し合うのはなかなか難しいものです。
賃料増額の通知を受けたら、お早めに弁護士にご相談されることをおすすめします。
監修:弁護士 中瀬奈都子
