賃貸借契約の解除・不更新
土地を賃貸している場合、様々な要因で賃貸借契約を終了させたい事情が出てくる可能性があります。
契約を終了するためには賃貸借契約の解除や更新拒絶の方法がありますが、どのような要件が必要となるのでしょうか。
そこで、本記事では土地の賃貸借契約の終了事由、解除や更新拒絶の要件について確認します。
土地の賃貸借契約の終了事由について
土地の賃貸借契約が終了となる場合には、主に下記のケースが存在します。
① 合意による解約
地主及び借主ともに解約の意思があり、話し合いによって契約を終了させます。
双方が合意した場合はいつでも解約が可能です。
② 契約解除
地主または借主の一方が、契約もしくは法律の規定により強制的に賃貸借契約を終了させます。
解除には法定解除権と約定解除権の2種類が存在します。
③ 更新拒絶
土地賃貸借契約において期間の定めがあった場合、貸主側が更新しない旨の意思を示せば期間満了をもって終了にできます。
但し、正当事由が必要です。
④ 解約申し入れ
土地賃貸借契約において期間の定めがない場合、当事者の一方が意思表示をすることで契約の終了を申し入れることができます。
ただし、この場合も正当事由が必要です
契約解除になる要件とは?
土地の賃貸借契約における法定解除の要件には、主に以下のようなものがあります。
地代の滞納
地代の滞納が長期に及んでいる場合、賃貸人は賃貸借契約を解除できます。
なお、解除となるのは「賃貸人と賃借人と間の信頼関係が破壊された」と判断できる場合に限られます。
したがって、1ヵ月程度の滞納では契約解除が認められない傾向となっています。
裁判例ではおおよそ3カ月以上の滞納がある場合に信頼関係の破壊が認めらる傾向にあります。
土地の用法違反
借主が土地の賃貸借契約で定めた用法に違反している場合、契約を解除できる可能性があります。
こちらも信頼関係が破壊される程度である必要があります。
例えば、居住用の用途の土地に飲食店などの店舗を建築した場合などが該当します。
無断転貸や無断での借地権の譲渡
民法上では、賃借人は賃貸人の承諾を得ずに第三者に賃借権を譲渡、もしくは転貸することはできません。
また、賃借人がこの規定に違反して賃借物を第三者に使用又は収益させた場合、賃貸人は契約を解除できるとしています。
ただし、賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情があるケースでは、賃貸人は賃貸借契約を解除できません。
具体的には、賃借人と賃借権の譲受人の関係が親族関係等の特殊な人間関係である場合などが該当します。
賃貸人の更新拒絶について
賃貸人が土地の賃貸借契約の更新をしたくない場合、契約更新を拒絶する意思を示す必要があります。
具体的には、下記のいずれかのタイミングで遅滞なく異議を述べなければいけません。
- ① 借地人から契約更新の請求がされている時
- ② 借地人が契約期間満了後も土地の使用を継続している時
さらに、更新拒絶が認められるためには正当事由が必要です。
正当事由がない場合、賃貸人が更新拒絶の意思表示をしても法定更新により契約は更新されたと見做されるため注意しましょう。
更新拒絶に必要な正当事由とは?
賃貸人の更新拒絶に必要な正当事由の有無は、主に以下の事項が考慮されます。
① 地主と借地人双方の土地を必要とする事情
地主が土地を使用したい事情、借地人が土地を使用したい事情の両方を考慮して、それぞれの必要性やその程度を判断します。
主に土地の使用目的や家族構成、収入や職業などの要素が判断に影響します。
② 土地の利用状況
主に土地の規模や用途、周辺地域の状況や建築された建物の種類等が考慮されます。
また、建物の経年劣化の程度や構造なども影響する場合があります。
③ 借地に関する従前の経過
具体的には借地権設定の経緯、借地の経過期間、借地権設定時の権利金・保証金等の授受の有無などが該当します。
借地人の賃料不払いや用法違反等も判断に影響します。
④ 財産上の給付
地主から借地人へ支払われる立ち退き料の金額、代替不動産の提供の有無が考慮されます。
正当事由の有無やその程度の判断には上記4つの要素が影響します。
土地の賃貸借契約の解除や更新拒絶は慎重に行いましょう
土地の賃貸借契約の終了事由、契約解除となる要件や更新拒絶等について解説しました。
契約解除や更新拒絶は、法律や不動産に関する専門知識がないと判断が難しいです。
個人で進めることもできますが、交渉や手続きなどは複雑ですので、弁護士に相談することをお勧めします。