近所の空き家に困ったとき、空き家を相続して困ったときの対処法 |不動産トラブルを弁護士に相談【川崎合同法律事務所】

近所の空き家に困ったとき、空き家を相続して困ったときの対処法

空き家問題とは

なにが問題か

 不動産には管理が必要です。不動産の管理は周辺に影響を与え、管理が行き届かないことから周辺に様々な問題が発生します。住む人が、死亡や入院等でいなくなり、管理できなくなった場合が空き家です。このコラムでは、近隣・地域に空き家発生して、具体的不利益を被っている、近隣・地域からの対処法を検討します。

具体的に想定される問題

空き家の発生により想定される具体的問題は以下のようなものがあります。

・家屋の倒壊

・草木、雑草の繁茂

・害虫、猫、ネズミ等の繁殖

・不審者のたまり場になる

・放火の危険

・ゴミ屋敷

・悪臭

・不衛生

・景観悪化

・近隣不動産価値の低下

社会的状況

全国に848万9千戸の空き家があり、空き家率13.6%(平成30年 総務省統計局)となっています。
 川崎市には、7万3800戸の空き家があり、空き家率9.5%(平成30年 川崎市)で近年はほぼ横ばいとなっている。

空き家が増加している原因

空き家が増える原因には以下のものが考えられます。

・核家族化に加えての少子高齢化

・新築志向から新築住宅の大量供給、中古住宅の市場未発達

・解体費用の高額化

・更地にした場合の税負担の増加

問題が起きた場合はどうする?

では、実際に空き家によるトラブルが生じた場合どうするのでしょうか。

基本的は、請求相手に必要な請求をしていくということになりますので、請求相手と請求内容を考えるのが肝心です。

請求相手を探す

空き家の場合、その不動産に請求の相手がいないことが通常ですので、誰に請求すればいいのか、それをどうやって調べるのかというのが難しい問題になります。

登記名義人を調べる

まず、法務局で当該不動産の登記事項証明書を取得し所有者を調べます。

未登記建物については、市町村から固定資産評価証明書を取得することも考えられますが、一般的に第三者は入手できません

登記名義人が死亡している場合

登記簿上の名義人が死亡している場合、住民票の除票や戸籍全部事項証明書を使って相続人を調査することになります。戸籍は、誰でも見られるものではありませんので、自己の権利を行使するために戸籍の記載事項を確認する必要があること説明する必要有ります。
 戸籍を調べ、登記上の所有者の相続人を調査して特定し、相続人全員に請求することになりましす。

空き家の相続人がいない場合

戸籍を調査した結果、不動産所有者の相続人が存在しないこともありえます。その場合、利害関係を有する者なら裁判所に相続財産管理人の選任を申立てることができます。その後、選任された相続財産管理人が空き家を管理することになり、場合によっては建物を取り壊す等の対応をすることができます。
 ただし、相続財産管理人の選任は、家庭裁判所の専権ですので、申立時に立てられた候補者にとらわれず選任されますし、相続財産管理人が申立人の思うような対応を取るとは限りません。また、裁判所は申立人に予納金を納付させる(20万円~100万円くらい)ので、申立人には、相当の負担が生じる可能性があります。

相続財産管理人の選任までは必要ないものの、裁判をするための相手方が必要な場合には特別代理人の選任を申し立てることも考えられます(こちらの方が予納金は安めの傾向にあります)。

土地と建物の所有者が異なる場合

建物を管理している人が一般的には土地の管理を行っている。したがって、通常は建物の管理者が相手になりますが、場合によります。

空き家が賃貸の場合

空き家の放置に請求の原因がある場合、空き家の占有は賃借人にあると考えられますので、基本的には賃借人が相手になります。しかし、賃借人の管理に落ち度がなく、家の修繕など賃貸人が放置しているなど場合は所有者である賃貸人に責任がある場合がありますので、請求原因の分析が必要になります。

空き家の所有者の判断能力に問題がある場合

空き家の所有者の判断能力に問題がある場合は、それにどう対処するのか問題になります。

①成年後見人の選任をしてもらい、後見人を相手とする。
②所有者の親族等と協議し、管理の委任を受ける
③事務管理(緊急時に他人の財産の管理をし、後で有益費を所有者に請求します。)

所有者が行方不明の場合

不在者財産管理人の選任を申し立てる必要があるかもしれません。相続財産管理人と同じく家庭裁判所に選任を申し立てます。特別代理人の選任を申し立てることも考えられる場合があるのも同じです。

2 何を請求するか

 何を請求するのかも非常に重要です。ここでは、類型的に考えられる請求の例を挙げてみたいと思います。

隣地との境界を確認したい

境界の確認は、土地の取引の際に必要になることが多いので、よくあるケースです。方法としては、①当事者間の協議。民事調停、②筆界特定制度、③境界確定の訴え、④所有権確認訴訟などが考えられます。

空き家がこちらの敷地にはみ出している

所有権に基づく妨害排除請求権として撤去を求めることになります。ただし、時効取得や権利濫用といった反論が行われることがあります。

隣の家が傾いてきた

所有権に基づく妨害排除請求権としての傾斜防止措置を求めることになります。仮処分を求めることも考えられます。
 著しい傾斜(20分の1超)等があれば、特別法である空き家対策特別措置法に基づく処置を促すことも考えらえます。

隣との間に塀を作りたい

共同の費用で塀を設けることができる。基本は話し合いになりますが、話会いが整わない場合は、板塀又は竹垣その他これに類する材料で高さ2mのものとすると規定されている。
 したがって、どうしても話し合いがまとまらないときは、自分の敷地に自分の費用で塀を建てるか、隣の所有者に対して設置協力を求める裁判を提起することになりますが、民事調停を検討する場合が多いでしょう。

隣から枝や根が越境してきている

枝は、切除させることができる。根は切り取ることができる。ただし、普通は無断で実行はせず撤去を要求することになります。

隣の空き地の下にガス管・水道管を埋設したい

基本的には所有権は地下にも及ぶので、他人の土地に埋設はできません。しかし、下水道法111項で他人の土地を使用しなければ、下水を公共下水道に流入させることが困難であるときは下水管については承諾不要とされている。これは、下水以外の配管について類推適用されることがあるので、その適用を考えることになります。

空き地・空き家からのごみに困っている

基本、土地をどのように使うのかは自由ですので。何も請求出来ない場合多いです。ただし、隣の敷地にゴミがはみ出している、その他、境界を越えて被害が発生しているような状態でも、所有者がなんらの対策もとらない場合は、不法行為により損害賠償請求出来る場合がありますのでその検討を行うことになります。

空き家からの火事

漏電等については空き家の所有者に請求できる。ただし、失火責任法の適用がある場合は、重過失が無ければ請求はできない。
 第三者による放火の場合は、基本的に空き家の所有者に請求出来ないことが多いと思われます。しかし、施錠していない、燃えやすい物を放置するなどしていた場合は空き家の所有者の責任も考えられる。

空き家に不審者が出入り

法的処置は難しいが、管理をお願いすることは常識的には可能と思われます。平和的に交渉し、所有者より管理の委任を受ける。警察に通報するなどの方法が考えられる。

空き家による不動産価値の下落

多く主張されるがほとんど認められません。ただし、受任限度をこえる不利益が生じ、住宅価格が相当下落した場合に下落相当額の損害賠償を認められる場合も考えられるので、被害が著しいときは検討の余地があるとおもわれます。

近隣の空き家への対応は弁護士にご相談を

近隣の空き家に対する対処は、法的にも経済的にも対応が難しいことが多く、対応に苦慮することになります。調査等、一般個人で対応することは困難だとおもわれ、弁護士に相談しても、容易に方針が見いだせないこと多いと思われます。対応するには、弁護士に継続的に相談し、調査と並行して様々な方法を検討して方策を考える必要があると思われます。当事務所では、一緒に対応を考えますので、お困りの方は、当事務所にご相談をお勧めします。

空き家を相続しそうな場合はどうする

これまで、近隣に空き家が出来た場合の対処を述べましたが、自分が空き家の所有者になることもあります。遠隔地にある、管理が難しい不動産を相続する場合などが代表例です。

最近は、はじめから相続放棄を検討する人もいますが、簡単に放棄できない場合も多いです。その場合、業者等も活用しながら管理を続け、活用か売却を検討することになると思います。

活用でも売却でも不動産について知識と不動産業者との連携が必要です。当事務所では、不動産業者とも連携して対応してきますので、空き家をどうすればよいかわからないときもご相談ください。

 

監修 星野文紀(弁護士・川崎合同法律事務所)

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