財産分与における、最近のマンション価値の急激な上昇の影響について
離婚と不動産
皆さんご存じの通り、近年、首都圏ではマンション価値が急激に上昇しております。離婚の財産分与の場面でも、マンション価値の急激な上昇から様々な問題が起きていますので、本件記事ではそのことについてお話ししたいと思います。
Q そもそも、マンションの価値は、いつの時点で評価されるの?
財産分与は、夫婦が婚姻期間中に協力して作った財産を公平に分ける制度です。夫婦の協力関係は、通常、別居時に無くなったと考えられるので、別居時を基準日として、その時点であった財産を2分の1ずつ公平に分けることが原則になります。名義が夫婦のいずれであったかは無関係です。
したがって、自宅マンションについても、基準時(別居日)に存在するのであれば、現物で、または、金銭で、分けることになります(婚姻前に購入されたものでも、ローンの支払いを夫婦が協力して行ったのであれば、財産分与の対象になることがあります)。
ところで、マンションの価値が長期間に渡ってそれほど変わっていなかったり、別居後すぐに離婚する場合には特に問題とはなりませんが、近年は急激にマンション価値が上昇していますし、事情によっては別居から長期間経ってから離婚することも珍しくはありません。近年は、いつの時点でのマンションの価値を前提に分与するのかがしばしば問題となっています。
結論から申し上げると、マンション価値が急激に上昇していたとしても、別居時ではなく、離婚時の評価額を基準とすることが通常です、とのお答えになります。
離婚後にマンションを取得して住み続けようと思っている一方当事者としては、他方当事者に対する支払い金額が大きくなってしまいますので、別居後にマンションが値上がりした分を財産分与の対象とするのはおかしいと主張されることもありますが、マンションの評価額の上昇は、夫婦いずれかの努力の成果でもありませんし、現物で分割する場合と比較すれば離婚時の評価額を用いて分与するのが公平に資すると考えられますし(住み続けたい一方当時者が代償金を支払うのが難しければマンションを売却して金銭で分けることもできますし)、そもそも過去の時点でのマンションの価値を現時点で正確に評価することは困難ですので、このように考えることが一般的です。
似たような問題で、よくご質問を受けるのが、では残ローンの額はいつの時点のもので計算するのか、というご質問です。これも結論から申し上げると、これは、別居時が基準とされます。別居後には、夫婦の経済的協力関係はなくなるのですから、別居後から離婚時まで、一方当事者だけが長期間住宅ローンを支払って残ローンを減らした場合に、住宅ローンを払っていない方の当事者がこの恩恵を受けることは公平ではありませんので、このような結論になります。
Q 頭金はどのように考慮されるの?
上記ご質問と同じくらい、よくご質問を受けるのが、頭金を払ったことがどう考慮されるのか、ということです。財産分与は、夫婦が婚姻期間中に協力して作った財産を公平に分ける制度だということからすれば、夫婦の一方の親族から贈与された金銭を頭金に充てた場合とか、結婚前に貯めていた預貯金を頭金に充てた場合のように、夫婦の協力とは無関係に作られた財産(このような財産は「特有財産」と呼びます。夫婦が協力して作った財産は特有財産に対する対比として「共有財産」と呼びます)が、財産分与で全く考慮されないのでは、やはり公平とは言えません。そのため、特有財産を頭金に充てた場合には当然考慮されますが、この場合にも、最近のマンション価値の急激な上昇の影響は考慮する必要があります。
例えば、以下のような場合を考えていただけるとわかりやすいと思います。
結婚後、夫婦が5000万円のマンションを購入することになり、夫婦は、夫の両親から500万円の援助を受けて、マンション購入の頭金に充てました。その後、5年が経過して、夫婦は離婚することになりましたが、離婚時のマンションの評価額は6000万円になっていました。
上記のような場合、まず、500万円を夫の特有財産として夫が取得し、残りの5500万円を半分にするのでしょうか。
上記事案では、マンションの価値が増加していたためそれほど理不尽には感じませんが、仮にマンションの価値が4000万円に価値が下落していた場合にはどうでしょうか。夫が500万円を特有財産として取得し、残りの3500万円を半分にするのでは、なぜ夫だけがマンション価値の下落の影響を受けないのか疑問に思われると思います。したがって、マンション価値が下落した場合には、マンション価値の下落分を特有財産にも割合的に考慮し、500万円×4000万円/5000万円=400万円を夫の特有財産として計算することが通常です。
同様に考えれば、上記の事例のようにマンションの価値が上昇した場合にも、割合的に計算することとし、500万円×6000万円/5000万円=600万円が夫の特有財産として考慮することが公平であると考えられます。
まとめ
本件記事では、財産分与における、最近のマンションの価値の急激な上昇の影響について検討しました。ただ、事情によっては上記とは違う考え方をとることが公平と考えられる場合もありますので、具体的には弁護士にご相談いただければ幸いです。
監修:弁護士 小野通子
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