相続財産清算人としての不動産売却
その他・読み物相続財産清算人としての不動産売却
弁護士 小林展大
1 民法上、被相続人に相続人がいる場合には、相続人は、相続が開始したときから、被相続人の一身に専属したものを除いて、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継することになります。
しかし、相続人が相続放棄をした場合等、相続人が不存在(または存否不明)となることがあります。
相続財産清算とは、被相続人に相続人のあることが明らかでない場合に、家庭裁判所が利害関係人又は検察官の申立てによって相続財産清算人を選任し、家庭裁判所の監督の下で、相続財産清算人をして、承継する者がいない状態の相続財産を管理、清算、消滅させ、また出現する可能性のある相続人を捜索し、最終的には国庫に帰属させる制度です。
2 相続財産清算人の業務遂行の過程で、被相続人に対して債権を有する債権者等に弁済をする必要が生じることがあります。弁済をするに際して、現金、預貯金があれば、それらを弁済に充てればよいのですが、現金、預貯金がない、もしくは不足している場合には、不動産等のその他の相続財産を換価して弁済をすることになります。
換価の方法としては、権限外行為許可審判に基づく任意売却が多いので、この任意売却について触れます。
3 相続財産清算人の権限は、清算権限を除き、権限の定めのない代理人の権限と同様、民法第103条所定の権限のみとなりますので、保存行為、利用・改良行為はできるものの、その範囲を超える行為をするには、家庭裁判所の許可が必要になります(民法第953条、第28条)。
そして、相続財産清算人による不動産の売却処分は、民法第103条所定の範囲を超える権限外行為として家庭裁判所の許可が必要になります。なお、家庭裁判所の許可なくして民法第103条所定の範囲を超える権限外行為をした場合、無権代理となってしまいます。
4 家庭裁判所に権限外行為許可審判を申し立てるにあたって、不動産業者に仲介の依頼をする等して買受人を探すとともに、固定資産税評価証明書、不動産業者の査定書等を取得して、売却価額の適否を検討します。
また、不動産売買契約書案の作成及び契約書案チェックも行います。相続財産清算業務は清算手続であり、また後日の紛争を防止するために、売買契約条項には、現状有姿の引渡し条項、契約不適合責任免責の特約を設けるようにしています。
さらに、買受人との間で公租公課の負担の時期の区分を決めて売買契約条項を設けるようにしています。その他、事案に応じて売買契約条項の修正等をすることもあります。
このようにして、家庭裁判所への権限外行為許可審判の申立書及び必要な添付資料の準備ができたら、家庭裁判所に対して不動産売却についての権限外行為許可審判を申し立てます。
5 権限外行為許可審判は、相続財産清算人が申し立てた行為が、権限外行為として家庭裁判所の許可を必要とするものであるか、許可を必要とするものであるとして、許可することが相当であるか等が審理されることになります。権限外行為許可審判は、申立人に郵送で送付されることになります。
権限外行為許可審判を得たあとは、買受人と正式に不動産売買契約を締結し、売却代金等の精算をするとともに、不動産の登記名義を買受人に移転する等の手続をします。
6 このようにして、相続財産清算人としての不動産売却が行われています。
以 上
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