同居中の彼氏(彼女)と別れたのに、なかなか出て行かない!家から出て行ってもらうには、どうしたらいいの!?~裁判を通じて、交際相手の早期退去、損害金等の支払に至ったケース~
同居の解消交際相手との交際解消に伴うトラブルは、少なくありません。
たとえば、交際期間中、一方がもう一方に支払ったり渡したりしたお金やモノについて、交際解消に伴って、返して欲しいといった御相談をよくお受けいたします。
法的には、そのお金やモノについて、あげたものか(贈与したものか)、あるいは、預けたり貸したりしていたものか、などの意味合いによって、その返還を求めることができるかの帰結が異なります。しかし、えてして、「返還を求める側」は預けたり貸したりしていたと主張しますし、「返還要求を受ける側」はもらったものだと主張しますから、並行線で、トラブルが激化していくことが多いのです。
さて、今回は、交際相手との交際解消に伴うトラブルのご相談のうち、同居していた交際相手が別れた後も同居する家から出て行かず、困っているという女性Aさんからのご依頼(解決済み)について、ご紹介いたします。
交際相手と同居している場合、交際解消に伴って、どちらか一方(あるいは双方)が自宅から退去していくケースが多いですが、折り合いがつかず、トラブルになってしまうケースが少なくありません。
Aさんのケースでは、Aさんと交際相手は、交際開始後、Aさん名義で賃貸物件(以下「自宅」と言います。)を借り、同居を始めましたが、その後、交際を解消することとなりました。Aさんも、交際相手も、互いに引っ越すという意向でしたので、期限を決めて、互いに自宅から出ていくこととしました。
しかし、Aさんは、期限内に自宅から出ていきましたが、交際相手は、期限内に自宅から出て行かず、遂には、自宅に住み続けたいなどと主張し、自宅に居座り続けました。
さて、大変です。なぜなら、交際相手が自宅に住み続けている状態では、Aさんは、自宅の賃貸借契約を解除することが出来ず(貸主への明け渡しが出来ないためです。)、その間の家賃の支払はもとより、交際相手が自宅や自宅内の設備を損傷、汚損させた場合の修繕費やクリーニング代についても、貸主との関係では借主であるAさんが負担せざるをえないのです。
困ったAさんは、何度も何度も、交際相手に対し、自宅から出て行くように連絡しましたが、交際相手は、自宅から出て行かないの一点張りでした。
こうした中で、交際相手に自宅から出て行ってもらうには、どうしたらいいのかということで、Aさんからご相談をいただきました。
Aさんのお話をうかがったところ、交際相手は、自宅の賃貸借契約においては、何ら関与しておらず(借主の一人ではなく)、ただAさんから自宅を無償で借りて住んでいる状態、つまり、使用貸借(無償の貸借であり、賃貸借ではありません。)であるものと判断いたしました。交際しているカップルの間での使用貸借の場合、大体は、交際を前提として、一方がもう一方に対し、物件の使用を認めているに過ぎませんから、前提となる交際の解消に伴う使用貸借の解除は、経験上、実際の裁判例でも、認めているものが多くあります。
そこで、弁護士から、交際相手に対し、自宅の使用貸借を解除する旨を通知し、再度、期限を決めて出て行くよう要求しました。しかし、結局、交際相手からは、期限内に退去したという連絡も鍵の返還もなく、その後、音信不通となってしまったことから、自宅の明け渡しと明け渡しまでの賃料相当分の損害賠償等を求め、提訴いたしました。
裁判を始めるには、まず、訴状を被告に送達する必要がありますが、交際相手は、裁判所からの訴状を受け取らず、対応が必要でした。このような場合、交際相手が自宅に住んでいるのか、すでに引っ越しており、自宅に住んでいないのかを住民票を取り寄せたり、現地(自宅)に行き、郵便ポストや電気メーターなどの現況を確認したりして、調査する必要があります。弊所では、このような調査も多数経験していることから、すぐに調査を実施し、対応いたしました。
その後、無事に裁判を開始した訳ですが、この段階で、音信不通であった交際相手から連絡があり、すでに自宅から退去したということでした。そこで、すぐに弁護士が自宅に向かったところ、交際相手が無断で自宅の鍵を付け替えており、Aさんの持っていた鍵では、自宅に入ることすら出来ず、業者による解錠の費用もかさみました。そのうえ、自宅内には、残置物(主にごみ)が散乱しており、清掃などの手間暇もかかるうえ、ごみであっても、残置物を勝手に撤去することは問題になりえることから、結局は、引き続き、裁判で解決することを目指し、手続を進めました。
裁判では、裁判官に当方の主張を納得していただき、裁判官から交際相手に対し、賃料相当分の支払等をすべきであるとの説明がありました。交際相手は、当初は、支払を拒んでいましたが、最終的には、裁判官の説明を踏まえて、一定の解決金の支払を認めざるをえなくなり、判決ではなく、和解で早期に解決することとなりました。
こうした次第で、Aさんは、交際相手に退去してもらうことが出来、退去までの損害金等も支払ってもらうことも出来ました。
さて、以上のように、同居していた交際相手が自宅から出て行かず、困っているケースでは、一人で解決することが難しい場合もありますし、私たち弁護士にご相談(ご依頼)いただくことで、早期の解決に至る場合もあります。トラブルを抱えている場合には、一人で悩まず、まずは、お気軽にご相談ください。
監修:弁護士 長谷川拓也
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